気になる記事~なぜ飼い犬が減り、飼い猫が増えているのか

東洋経済オンライン
11月18日(水)6時5分配信

2大ペットと言えば、犬と猫。しかし、「かわいい」「癒し」といったキーワードでは割り切れない複雑な問題が多い。第1回はデータに基づき、ペット業界の現状を浮き彫りにするとともに、犬と猫の受難の歴史を振り返る。続く第2回は鹿児島県・徳之島での全島一斉の不妊・去勢手術の光景を軸に、地方独特の猫の生きざまを描く。第3回は東京の「地域猫活動」を切り口に、人間の安易な善意が猫を幸せにするとは限らない実情を紹介。人とペットの関係について考えていく。
 日本におけるペットの歴史が、大きな転換点を迎えているのをご存じだろうか。犬と猫の飼育数が、歴史的な逆転を迎えようとしているのだ。


 なぜ猫が人気なのか。そこには、飼い主側である人間のさまざまな身勝手が見え隠れしている。

ペットフード協会の年次推計によれば、2014年10月時点の猫の国内飼育数は996万匹と過去3年間で3.7%増えた。犬がこの間13%減って1035万匹となったのとは対照的だ。 一世帯当たりの飼育数が犬1.25匹、猫1.79匹である点からもうかがえるように、猫は複数飼いが主流である事情も押し上げ要因となっている。今年10月時点での調査結果は来年1月に発表予定だが、このペースで行けば逆転した公算が大きい。

■ 猫の一生70万円、犬は119万円

 生涯の飼育平均費用も、猫(平均余命14.56歳)が70.3万円に対し、犬(同14.25歳)は118.5万円。身も蓋もない言い方ではあるが、景気低迷が長期化している中で、飼う側にとってはコスト面で有利なのである。

 東京農業大学の太田光明教授は「猫は清潔好きで、犬のように散歩させる必要がない。共働きが増える一方、住宅が狭いことで受け入れられている」と語る。教授は研究室に愛猫を連れてきているが、話を聞いている間、筆者に一回あいさつに来た後は、猫用ベッドでおとなしく寝ていた。

 太田教授は「現在、全国約1万1000件ある動物病院のうち、10年後には3割が廃業する」との試算を示す。「医療費が相対的に高い犬の飼育数が毎年50万匹ずつ減って1000万匹から500万匹へと半減すれば、採算が取れなくなる」からだ。
また、「米国では飼えなくなった場合に新たな飼い主を探すペット保険があるが、日本にはない。高齢化などで世話ができなくなると、基本的に捨てるしかない」と説明。こうしたケースを想定した契約にならない限り、日本でペット保険が根付くのは難しいと述べている。

 この状況は、当然ながら関連業界には痛い。業界の横断的な組織「ペットとの共生推進協議会」が都内で15日開いたシンポジウムでも、危機感が話題の中心となった。

■ 高齢者による飼育促進が犬の減少を止める

 パネルディスカッションで司会を務めた越村義雄ペットフード協会名誉会長は「日本の個人金融資産1700兆円のうち半分は70歳以上が保有している」と指摘。高齢者が犬を中心とするペットを飼い続けられる体制作りに向け、「業界として、色々な提案を考えないといけない」と力説した。

 シンポジウムには太田教授も参加。犬の散歩が高齢者の心身に好影響を与えるとの実験結果を示した。ペット飼育によってドイツでは7547億円、オーストラリアでは3088億円の年間医療費が抑制されたとの報告も紹介した。スイスでも、犬と猫の飼育には明らかに医療費を削減する効果があったとの調査結果が得られたという。

 分母となる各国の医療費の額は不明だが、太田教授がこの報告をまとめた研究者たちに直接尋ねたところ、「だいたい20%くらい」が抑制されたとの答えが返ってきたとのことだった。

 1995年に国内初のペット保険を発売した企業、日本ペットオーナーズクラブの創業社長の野川亮輔氏も出席。「英国ではベット保険の普及率が30%近いが、日本では4.7%。もっと普及させなければ」と強調。高齢の飼い主が生前、信頼できる医療機関などに犬や猫を預けて終生の世話を託せる「ペットあんしんケア」制度を導入したと説明した。

 ただ、制度の詳細を見ると最も安い小型犬・猫で、基本料350万円のほかに年間65.7万円の預かり料が必要。価格設定が強気過ぎる気がして野川氏を直撃したところ、飼い主が加入する生命保険の活用を想定しているとのことだった。今年4月に募集を開始したが、現時点で預かり契約の実績はないという。
ここからは実態把握が困難な、飼い主のいない猫たちの話になる。環境省の統計によると、2013年度の行政による猫の殺処分数は9万9671匹で、うち幼齢個体は60%に当たる5万9712匹。これに対し、犬の殺処分数は2万8570匹だ。 総理府が集計していた時代の1974年度(狂犬病予防法に基づく推計値)は、犬116万匹、猫6万匹だった。愛護意識の高まりから減少傾向を続けてはいるが、2000年度以降は猫の処分数が犬を一貫して上回っている。

 この「殺処分」の数には便宜上、交通事故や病気などで死亡した例も含まれる。子猫が多いのは、発育途上で病気やけがに弱いからだ。

 たとえば、川崎市動物愛護センターでは、昨年死亡した猫が135匹なのに対し、実際の殺処分は12匹。2012年までは殺処分が圧倒的に多かったが、ボランティアと協力した里親探し強化で逆転した。2011年時点では殺処分308匹、死亡88匹だった。

■ かつては動物実験への払い下げもあった

 殺処分や虐待などの以外にも、不幸な目に遭ってきた犬や猫も多い。過去には自治体の多くが収容した犬や猫を、大学や企業の研究施設に実験用として払い下げていた。この数は殺処分に含まれていなかった。

 NPO法人「動物実験の廃止を求める会(JAVA)」によると、生きた犬猫の払い下げについては、愛護意識の高まりから、東京都を皮切りに廃止の波が大阪府や神奈川県などにも広がり、2006年度には国内で全廃された。

 死体についても、現在では奈良県が伝統や文化の保護を名目として、猫の皮を使う三味線の製造業者向けの払い下げ制度を残しているだけだ。同県の担当者によると、ここ数年は払い下げの実例はないという。

 だが、行政からの提供が無くなったからといって、繁殖企業から買い付けたり、研究施設内で自家繁殖させた犬猫を実験に使用するケースが途絶えたわけではない。真相は闇の中だ。

 和崎聖子JAVA事務局長は「大手化粧品会社が現在、相次いで動物実験の廃止を宣言している。10年ぐらい前では考えられなかった変化だ」と活動の成果を強調する。一方で、「動物実験の全廃にはまだほど遠い。その実現のために、市民や消費者がもっと声をあげていかなくては」と語る。

 和崎氏はまた「自治体が殺処分減に固執するあまり、収容した動物を安易に譲渡したり、愛護団体に押し付けてしまう例もあるようだ」と指摘。問題解決の基本は「飼い主が最後まで責任と愛情を持って飼うことであり、行政による徹底的な啓発・指導の必要がある」とも述べている。

 飼い主の責任逃れや行政の帳尻合わせによって苦しむのは、声をあげることのできない小さな命なのである。

駅 義則
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